新英語教育研究会関東ブロック研究集会(埼玉) web

2019年1月5日(土)・於獨協大学

講 演:ことばの力学と英語教育
〜応用言語学の視点から日本の英語教育の方向性を考える
白井 恭弘(ケース・ウェスタン・リザーブ大学教授)
および実践報告

 

分科会まとめ

少人数・習熟度別授業でも、仲間とつながる活動を取り入れたい
大越 範子さん(東京都西多摩郡瑞穂町立瑞穂中学校)
 2クラス3展開での東京方式の少人数授業により、複数の教員で一つの学年を担当する中でも、ていねいな合意づくりとプラン共有を行い、特に導入・展開の場面での「最小限の準備で、記憶に残る形で、生徒たちとの交流を楽しむ」活動例の実践を報告してくださった。常に自分の立場で表現する練習、構文力不足を協働的な学びの力を利用して高める英作文活動、話す活動の指導が苦手な先生も巻き込んでの全員でのスピーチ発表等、超多忙な中にも関わらずここまでできることに驚かされた。

 

生徒と私の思いが詰まった英語の歌!〜3年間で扱った100曲のなかから〜
小池 奈津夫さん(埼玉県立草加西高校)
現職教員としての最後の3年間、学年主任として生徒達に関わりながら1週間に1曲のペースで生徒からリクエストされる歌のプリントをつくり授業の冒頭で扱ってきました。歌の持つメッセージを、大切に生徒と共有する視点を学びました。社会的背景をも伝えるプリントづくり、分厚いプリント集の熱いメッセージに皆感動させたれました。

 

講演によせて

新英研誕生から10年経った1969年に浦和で産声をあげた埼玉新英研は、県支部独自の例会を連綿と続けながら、中央常任の仕事も多く担ってきた。50周年の節目にあたり記念行事も兼ねて、1980年代にともに英語教育習得論の原書を読み合った白井恭弘さん(アメリカ・オハイオ州ケース・ウェスタン・リザーブ大学教授)をお迎えしてお話しをうかがった。
 上智大学を出て浦和市立高校に赴任、高校時代に教わったような文法訳読式で授業をすすめるが、物足りず上智のコミュニティカレッジに通う中で吉田研作さんから応用言語学の初歩を教わる。クラッシェンのNatural Approachを同僚の協力も得ながら実践、科学的教授法や多読指導の結果、英語科だけ偏差値が10ポイント上がる実績を経験した。その後UCLAで学位を取得、大東文化大学に職を得るが、アメリカでの研究に魅力を感じ、カーネギーメロン大学を皮切りに、コーネル大学、香港中文大学、ピッツバーグ大学で教えながら言語科学会(Japanese Society for Language Science)会長の要職も務められ、2015年から現職。
 白井さんは日本では『外国語学習に成功する人、しない人 第二言語習得論への招待』、『外国語学習の科学 第二言語習得論とは何か』、など岩波書店から多く、さらに大修館書店や中経出版からも言語習得の本を出されている。2018 年8月には“Connectionism and Second Language Acquisition(Cognitive Science and SecondLanguage Acquisition Series)”(英語ペーパーバック版,5702 円)という専門書を上梓されている。
 講演は『ことばの力学 応用言語学への招待』(岩波新書)に沿って準備されたパワポを使い語られた。休憩のあと、グループ毎に感想や質問を出し合い、全体に戻す形で行われた。集会終了後も柳沢が教職実践演習で教えた学生からの質問にメールでのやりとりでお答えいただくなど、教職をスタートした埼玉で講演をすることを楽しんでおられる様子であった。

(文責:柳沢民雄)

 

グループ協議I

(もっと知りたいこと・深めたいこと・インパクトのあったこと)

・音声指導は早ければ早いほどよいのか(中学校からでは遅いのか)。

・英語教師はどのような英語を話したらよいのか

(日本語英語ではダメか)。

・日本人教師が英語を教えることの利点と課題。

・母語を使って学ぶことの是非について。

・母語の干渉を少なくする、いうがAll English での授業をどう考えるか。

・バイリンガルの定義を、母語との関係はどうか。

・母語とことなる音と文字をどのように身につけさせるのか。

・ナチュラルアプローチをとりいれて、なぜ偏差値が10上がったのか。

・アウトプットの効用について、どのように自分の英語と相手のとのギャップに気づくのか、今まで教えてきたのとどう違うのか。

・インプットモデルの例をより具体的に。

・リスニング・コンプリヘンションの順序の妥当性は、どうか。

・知っているけど使えないのは自動化できていないのではないか、というのは定着運用練習が不足しているからか。

・少量のアウトプットとは、具体的にどこで、何を扱うのか(高校ではインプットで扱う英文のレベルとアウトプットでの英文で差がある。難易度、レベル、量はどのくらいか。

・アウトプットの種類にはどのようなことが考えられるか、自分の考えなのか、英訳なのか。

・アウトプットはどこまで訂正が必要か。

・多読多聴はどのくらいすればよいのか。

・音はいつ、どのタイミングで意味になるのか。文字を介さずイメージする方がわかるというデータはあるのか。

・新出語彙が多い教科書はインプットによる学習を促進するのか。

・コミュニカティブアプローチに対しては懐疑的。

・インプットとアウトプットのバランスを授業のなかでどうするか。教師にその下地が必要となる。

・アウトプットというには英語を使ってコミュニケーションをするなのか。

・文字もおぼっかないのに急に書かせることは難しい。

・「教えたからといってすぐにできるわけではない」というが、それではどうしたらよいのか。

・インターネット利用による英語学習とは。具体的に。

・米国の日本語教授の事例で、学校の授業のみで話せるようになったのか。

・ノンフィクションでおちのある話の具体例を知りたい。

エビデンスベースでみた今の日本の英語教育政策(英語で英語を、児童英語の早期化)について。

基底言語能力について、小学校で育成するには、参考例はあるか。

小学校の実践でとれるデータには何があるか。

小学校外国語教育の意義・目的をどう考えるか(スキル指導・評価の気運についての見解)。

・英語は世界一美しいというのは聞いたことがないが、どうなのか。

・平和のための外国語教育は具体的にどのようなものか。

 ・ほか、実践とどうかかわるか、実践にどう生かすかという視点も出し合う予定だったが、時間切れとなりました。