埼玉新英研2月例会 2月3日(日)武蔵浦和コミュニティセンター

 

スタンダードな授業に綾りを添える試み

~生徒の心に触れる自主教材と英詩・自己表現活動の紹介

         小美濃 博[おみの ひろし

東京・府中第四中学校

  Another Story of August 6th : 広島市の条例でそれまで86日は試合が行われていなかったが、2011年は条例改正で「慰霊の日」に使えるようになった球場で、広島対巨人戦が行われた。それまでは慰霊の日に野球をすることは避けられてきて、この日に広島市で公式戦が開かれたのは53年ぶり。このことが「NNNドキュメント 原爆の日のプレーボール」で詳しく紹介され、広島カープ主砲の栗原選手が原爆や平和のことを語る姿に感動し、カープファンで栗原選手の大ファンでもある小美濃先生が原爆と平和、そして今の広島について考えて作成した教材の実践報告でした。

  英文を読んだ後に見た生徒の集中力はいつになく高く、栗原選手が家族と平和について語る場面では涙ぐむ女子生徒がいたり(栗原選手の奥さんは被爆三世で、そのお子さんは被爆四世)、また英語の苦手な野球部の生徒が深く教材を読み込んでいたそうです。

  この教材と生徒の感想をNNNに送ったところ、大変喜んでいただき、その後再編集放送の予定があり、追実践の呼びかけもいただいたそうですが、放映には至りませんでした。でも広島の角崎先生が追実践をし、生徒の感想文の交換も行われ、改めて広島の生徒の平和への意識の高さを知ったそうです。

  平和教材づくりの視点として、今の生徒は声高に平和を訴えると、生徒は引いてしまうので、静かに平和を語るような教材づくりを大切にしているという視点と、生の物を取り入れるというお話が私はとても印象的でした。

  教材の英文の中で1つ気になったことは、53年ぶりに復活した理由が述べられていなかったことです。元球団職員の「できることならそっとして。今までやらなかったのに」という話や、またプロデューサーの「半世紀も続いた被爆地の慣習が変わるのは良いことなのか」という迷いが、いかにして取り払われ実現したのかが描かれていると、もっとよかったのでは、と思いました。最初ためらっていた元球団職員が、「8月6日がどういう日か忘れない日にすればよい」と変容した過程が印象に残ったからです。

 他にNHKBS1「ポーランド移民の女性時計修理工」の生き様に感動し、自主教材Another Story of My Grandfather's Clockをつくり、3年生最後の授業にしている話や、Just for today by The Poem from the bookAnn Landers”を参考にしての英詩や自己表現の紹介もしていただきました。

 最後にNHK・日曜ドラマ『フルスィング(第4回キャッチ)』の「ラスト5分の迫真の英会話」を鑑賞するなど、とても暖かみのある、穏やかな小美濃ワールドの世界を堪能することができました。

高等学校でのCLILの実践

山崎 勝(埼玉県立和光国際高等学校)

   CILLとはContent and Language Integrated Learningの略で、「内容言語統合型学習」というものだそうです。  和光国際高校では2011年4月よりCILLの実践研究を、外国語科2年生の「異文化理解」の授業において開始しました。

  CILLには「4つのC」があり、そのCとは Content(内容), Communication(言語),  Cognition(思考),  Community (協学) のことで、これらの4つのCを「統合」するのがCILLの授業のようです。要するに、内容のあることを、考えながら、友だちと協力して、ことばをつかって発信・発表するということではないかと私はとらえました。

  授業の映像を見ての報告でしたので、生徒の様子がとてもよくわかりました。授業はほとんど英語だけで行われており、生徒の英語のレベルの高さに驚かされました。何よりも驚かされたのは、オーラルで授業を進行する山崎先生の教材研究でした。英語で授業をする場合、かなり用意周到に準備ができていないと(特に易しい英語で)生徒は理解できず授業が重たくなりがちですが、生徒は山崎先生のオーラルイントロダクション・インターラクションに、実に自然に反応していました。

  これまでの取り組みの成果を、山崎先生は次のようにまとめていました。

「内容」と「言語」の統合は従来の授業でも行われていたが、それに「思考」と「協同」を加えることにより、Retelling や Summary Writing を超えたメッセージの授業が行われる。

・Conttent(題材内容)が豊かなので、output に至る学習の過程にやりがいを感じる生徒が多い。

・生徒たちが、output を意識して学習に取り組む傾向が出てきた。

・発表では、一定の内容のある程度しっかりした構成で話せるようになり、ディスコースレベルでの言語使用は達成しつつある。

・聞き手にとって理解可能なspeaking の経験を積むことによって、writing の質と量にも相乗的に向上が見られるようになった。

  最後の質疑応答の場面で、次のことばが印象に残りました。

  ①いくら日本語で協調しても英語が出来るようにはならない。

  ②大部分の子は仕掛けを作らないと発表まではいかない。

  ③低辺校でもできることはある。相手に合わせて(書きおろすようにして)る。      

  最後に参加者の声を紹介します。

  ■どう取り組めるか。自分を変えたい。遠い指針を示してくれた。また来たい。

  ■授業で悩んでいる。これを機に取り入れていければ。

 会報で山崎先生の名を久しぶりに目にしたとき、先生がかつて映画『ゴースト』のセリフを全部英語に直した実践報告を思い出し、とても懐かしくなりました。

(文責 大栗)

 

新英語教育研究会埼玉支部

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