埼玉新英研5月例会

 

 2013年5月11日(土)(15時~18時)、浦和コミュニティーセンターにて、参加者15名。3月20日に開かれた「英語教育サークルフェア in 埼玉」で発表されたお二人に、再度お願いをして、じっくりとお話をお聞きすることができました。

 

<報告1>  『統合的コミュニケーション能力の育成へのヒント』−「総合的に、、、?」「統合的に、、、?」

  瀧澤 広人(たきざわ ひろと)埼玉・秩父郡・小鹿野小

  最初の報告者は遠路はるばる秩父から4時間近くかけて、浦和までお越しいただきました達人セミナーの瀧澤さんです。中学で21年教えてから小学校に写り、今年で5年目だそうです。これまでに著した著書は何と25点あまりという有名人。パワーポイントを駆使した楽しい活動を、次の3つの授業づくりの視点(①楽しい授業②生徒の活動が多い授業③意外性のある授業)からたくさん紹介していただきました。

 最初に紹介されたのが東京ディズニーランドのマジックショップで手に入れたノート。

 何の変哲もない白紙のノートをペラペラと紹介された後、先生から質問が出されいよいよワークショップの始まり。Are there any pictures? 元気にNo, there aren't. と答えましたが、あら不思議、Yes, there are. との応答に、さっきまで真っ白だったページにたくさんの絵が現れるではありませんか。するとまた絵が消えたり、次にはカラーの絵が現れたりでみんな驚きの連続でした。ぜひ欲しいこの1冊、値段は1,050円で、東京ディズニーランドでしか販売していないそうです。

  次に絵を見ながら文を完成しました。(        )内に入る語をみんなでいろいろ考えて入れてみました。When you see this signal, you ( must ) stop./ you ( can ) go.  最後の英文にはyou ( must be careful. )が多かったのですが、道路交通法では( stop ) だそうです。

  今度は落ちのある話の結末を考える問題。学校に行きたくないと理由を言う息子に母親は何と言ったか。さすが新英研の先生方は優しいです。You can stay home.とか無理強いしない答が多かったです。この話、ご存じの方も多いと思いますが、母親はこう言いました。Don't say that. You are fifty. And you are the principal, aren't you?

  次に1枚の絵をさかまにすると別の絵が現れる絵の紹介。先生はたった1枚の絵が欲しいために購入した本はたくさんあるとか。この本は『まさかさかさま』というシリーズ本。

  このような楽しいワークショップがどんどん続き(・数字20を言ったら負けゲーム ・キーワードゲーム・Missing GameWhat is odd one out?・スリーヒントクイズ)あっという間に時間が過ぎていきました。

  最後に、小学校6年生と中学生のスピーチを鑑賞しました。どの生徒も物怖じしないで実に楽しそうに英語を話し、中学校ではそのスピーチの内容に質問をするというインターラクションまで発展していて驚かされました。小学校と中学校の連携の必要性を改めて考えさせられると同時に、4技能の統合についてもたくさんのヒントを戴きました。

 最後に高等学校学習指導要領解説の資料を紹介され、中学校と比較しながら、高校でも「総合的」「統合的」な活動をうたっていることを知ることができました。

 

<報告2>  『意味順英語学習法』を活用したライティング授業

 三沢 (みさわ わたる)埼玉県立川口青陵高校

   <埼玉県高等学校英語教育研究会所属>

  三沢さんは大学では教育学部で技術家庭を専攻だったそうですが、英語科の免許も取得されたとのことです。大学時代はESSに所属して英語劇やディベートに取り組んでおられたとのこと。進学校から英語の苦手な高校に移り、英語の苦手な生徒の実践や研究を深めています。また埼玉高英研の副幹事長をなさっています。

  三沢先生は昨年3年生のライティングの授業で『意味順英語学習法』(田地野 彰著)を取り入れて授業を行いました。この本の中の意味順とは、英文を構成する主要な意味のまとまりの並び順のことです。例えば1つの英文を、誰が、どうした、と大きく2つに分けます。次に述部をする(です)、だれ・なに、どこ、いつ、という意味のまとまりごとに切った順を意味順と呼びます。私たちが暗示的に行っているフレーズリーディングのようなものを、明示的に学習英文法として形にしたものが大きく言うと意味順です。

   だれが する(です) だれ・なに どこ いつ

 この5つの要素を「意味順フォルダ」と呼び、各フォルダの中身(ファイル)を入れ替えることで、文の意味を変えたり深めたりすることができます。この文の組み立て方・意味順を横軸、ファイルの中の文法項目を横軸と位置づけます。

  意味順フォルダでは、例えば する(です)の動詞の部分に着目すると、動詞の時制や受動態、仮定法、助動詞、進行形、完了形などがきます。だれがのところでは日本語では主語が省略されることが多く、この省略されている主語の意味を考えて補う力が必要とされます。その例として「今夜はスキヤキだ」等の日本文を紹介しています。

  次にだれ・なにフォルダには だれを とか なにに という助詞がついていません。以前はこのフォルダは2つあったのですが、第4文型で見られる I gave him a book. の中には He got a book. とか He had a book. という意味の関係があり、We call her Nancy.の文なら She is Nancy.の関係があるため意味の結びつきが強い、そのため1つのフォルダに入れてあるそうです。以下、どこ や いつ が並び、最後にオプションとして どのように(して)や なぜ などの副詞句が続きます。

  次に意味順で防げる3つの大きなミスが紹介されました。ミスのなかにも「許される間違い」と「許されない間違い」があり、意味順を使うメリットとしてTonight is sukiyaki.  のような「許されない間違い」が防げるようになります。具体的には①語順の間違いがなくなる ②主語のつけ忘れがなくなる ③そのまま「直訳」しなくなる、の3つ。特に③では字面ではなく明確な意味(日本語)にとらえ直してから英語に変換することの大切さが強調されました。例えば「犬と猫のどちらが好きですか」の問に、「私は猫です」と答えるときに、「私は猫の方が好きです」とワンクッション置いて変換することが大事なステップ。

  このように1年間ライティングの授業を行ったところ、致命的な語順の間違いは減ってきたと実感しているそうです。やはり分析的に分かるということは不可欠です。

  最後の質問のところでオールイングリッシュのことが話題になり、三沢先生は「一度日本語で教えたことを次に英語でやってみるということならば、ある程度可能かもしれないが、分からないことばは何回聞いてもダメだと思う」と返答されました。この言葉が大変示唆的で印象に残りました。最後に授業風景のビデオが紹介されましたが、先生と生徒の心温まるふれあいが随所に感じられ、ここにも「国民教育」としての「英語教育」を見ることができ、参加者がみんなとても幸せな気分になり家路に向かいました。

(文責 大栗 健二)

 

新英語教育研究会埼玉支部

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