5月例会報告
田中渡さんの記録を大栗さんが校正したもの。
埼玉例会2017年5月27日.pdf
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[埼玉新英研5月例会報告]

 2017527日(土)午後2時より「岸町公民館」で開催され、14名が参加しました。

I. 丸山報告

 まず、『自分の言葉で伝える難しさと楽しさ』として、丸山怜子さん(草加中)がパワーポイントを使いながら、自分で考えて自分の言葉で伝える「自己表現力」を高める実践を報告しました。

 実践例1:国(20カ国)カードをひき、その国のことを5文で話す。

 実践例2:接続詞whenを用いて、子どもの時の自分について話す。

 実践例3:教科書本文でにあるセヴァン・スズキのスピーチを、キーワードやイラストをつけたプロダクション・シートにもとづいて再生する。

 実践例4:「文化の違い」を調べて、比較級を用いてたクイズをつくる。

 実践例5:白川郷について、同様のリプロダクションシートにもとづいて、ALT20秒間で話す。

 実践例6:ハンバーガー店での買い物を、全体の前でジェスチャーを交えて発表する。

 実践例7:人数分、異なる写真を用意し、現在進行形・受動態などの既習表現を用い、ストーリーテリングをする。最低でも5文は言うようにする。

 実践例8:好きな季節や行ってみたい国などについて、会話を1分間続けるフリートークに、最初は型を与えて、とりくんだ。

 報告者から、達成感はあるが、生徒は「話せるけれど単語が書けない」と、ライティングへの見通しや、公立高校入試問題(学校選択制)への対応、また「1.草加市ではすべての中学校で英検を受検することになったので、英検対策を授業でやるべきか、2.全文訳は必要か、3.音読シートにカタカナをふっているが、どうか、4.入試に向けてどのような対策必要か」の4点も課題としてだされ、次のような意見交換がなされた。

・川村光一さんが考案した「弾丸」インプットが、埼玉で広まっているのか、日英の置き換え練習を素早くすることの利点はあるが、「弾丸」という言葉は好ましくない。

・1時間の授業の流れはどのようか、という問いでは「1」歌、2」音読、3」ストーリーテリング、4)文法指導、5)今日習った文法を使って1文書かせる」とのこと。ストーリーテリングは毎日、帯活動(30秒間6セット)として、おこなっているとのことであった。

・話せるけど書けないということだが、かつては書けるけど話せなかった。文で覚えるようにするとよい。

・歌のプリントは両面印刷で片面のものには、カナをふるようにしている。手がかりとしてのカナだったらよい。リーディングシートも片面はカナふりをするとよい。

・日本語訳を授業中にノートに写すのは、時間がもったいない。カッコを空けておいて、その部分の訳を書かせて時間を節約するのもよい。リプロダクション(日→英)の時間を多くする。

・訳さなくてよいところは訳さず、丁寧にした方がよいところは訳すようにする。

・文法項目を習ったら、それがでてくる曲をあつかうようにする。

・英検対策は授業でする必要はない。ただし入試対策としては、3年間の総仕上げのための問題集を2年次の終わりに購入し、家庭学習をさせ、3年時に中間試験や期末試験で出題するようにした。

・入試対策として生徒がして欲しいのは、長文読解とリスニングで、授業中にするようにしていた。

 

Ⅱ.大栗報告

 大栗さんは、定年退職後、フルタイムの再任用教員となる。2年目は補充の非常勤講師であったが、その後再度再任用教師となり、この3月迄3年間松江中学校に勤務した。「心の学力」ある生徒たちとの出合いもあり、「ああ、教師っていいな」と思い返している。報告では、学力をどうつけるか、また同じ英文でも意味のあるものを追求し、表現活動にとりくむというものであった。

 まず、授業づくりでは、授業規律の確立をはかる。チャイムとともに授業に集中できるよう、チャイム着席を徹底。私語は認めず、話は目で聞くとして、修学旅行で京都のバスガイドさんが、話を始めると「みんな私を見てる」と驚くというエピソードもあった。

 月に1曲、英語の歌を授業のはじめに歌ってきた。大栗さんは、きまって例会の報告の冒頭で、小話やクイズで、皆を引きつけることが知られている。生徒たちも、そうした小話や社会のできごとをとりあげるスモールトークを楽しみにしているという。

 シャドウイングで授業をはじめ、次に英文をthis picturethese picturesof animalsthese pictures of animalsとなる『WORDS&PHRASES』ワークシートでペアワークをし、語彙と教科書本文を定着させる。CDを1文ずつ止め、「主語」「動詞」「目的語」「補語」を皆で探し、色づけや記号づけをおこない、教科書本文の構造理解をする。文法についても『授業プリント』で新出文法を学び、合い言葉で仕上げる。

 「まとめノート」に、すべてのプリントを貼り、本のようにする。まずプリントをハサミできちんと切ることや、スティック糊(水糊ではきれいに貼れないない)で中心から貼るようにする、またページをふるなど手順を指導する。ページがふってあれば、授業でも活用できる。はじめのうちは、点検し、習慣づける。

 意味の単位ごとに日英を対比した『通訳プリント』は、部分的に訳すことはするが、全文を訳すことはしない。4人グループで、読みあげられた日本文を聞き、該当する英文を教科書から探す活動は、好評であった。教科書を50回読むことを目指した。

 基礎力を確かにするために、基本対話(Basic Dialog)をペアで暗唱するテストをする。教科書の各セクションの4行から5行を暗唱することに、給食時や放課後などに、2週間単位で1年間とりくみ、どのクラスもほぼ100%達成した。4人で日本文を見て3分でよどみなく言えたら合格。合格すると生徒から歓声がわき起こるのは感動的ですらある。

 自己表現として、あこがれの人と夢の会話をする「夢の会話」、Show & Tell(期末試験に原稿も書かせた)、不定詞を使った「新年の誓い」、Courage is という詩から一人ひとりの「勇気」を書かせ、卒業式に玄関に掲示するなどした。

 マララのスピーチなどの感動教材では、個人で暗唱するテストをおこなった。ALTのシャーウィンさんによる、日本ウォッチングも好評であった。時宜を得た、政治的なことに関する英文も与えた。

 『最後の授業』として、"It's Okay To Be Different"(Todd Parr)の絵本を見せ、It's Okay To Be…はとの自己表現では、さまざまな生徒の成長が英語で綴られた。

 1981年に会った高見山に近々再会する話も紹介された。

 はじめて入試対策にとりくんだが、『全国高校2017年入試問題正解』(旺文社)には、よい内容のある英文もあり、活用されるとよいとのことであった。

 以下のような意見交換がなされた。

・プレゼンテーション(Show & Tell)の発表が、楽しそうだった。                 

・(高見山に電話をするなど)行動力が素晴らしい。いろいろなことアンテナをはる。子どもの心に響き、社会に目を向ける英文を示したい。

・ノートを見てもわかるが、あれだけのプリント使うのは素晴らしい。あれだけやったら自然と力はつくのではないかと思う。メリハリのある実践で、ムダな時間を省き、集中力をつけさせている。

・品詞がわからない生徒や、3年生になって主語がわからない生徒も、積み重ねで、何回もやることでわかってくる。

4人グループで1人がプリントの日本語を読み、他の人が対応する英語を読むようにさせているが、球技の練習で「球出し」をするように、『WORDS&PHRASES』で班長に質問のタマをぶつけるのもよい。

・英和辞典は中学1年時から使えるようにしたい。

・タスクリーディング(日本語によるQ&A)はみんな生き生き活動する。

 

 大栗さんの素晴らしい実践報告に一同が感服。またベテランから若手へのアドバイスなど、英語教師同士の素晴らしい励まし合いと、学び合いのひとときを過ごすことができました。

 

 田中渡さんの記録にもとづいて編集しました。