埼玉新英研・2013年度9月例会報告

 

9月22日(日)午後1時半から、さいたま市浦和コミュニティセンターで浅香啓子さん(草加市立川柳中学校)の「産休・育休明けの私の授業」という報告を聞きました。(参加者13名)

 浅香啓子さんは育児休暇を終えて、今年の4月から現場に復帰しました。そしてこの報告を終えた週に、第3子の出産のため産休に入るという、大変お忙しいスケジュールの合間を縫ってレポートをしていただきました。参加者の中には、自身のお連れ合いが現在育児休業中のため、レポーターから貴重な話が聞けるのではないかという期待を込めて参加している方もいました。

 浅香さんは現在1学年に所属。英語を4クラスに複式学級、総合的な時間で合計21時間教えていますが、子育てもあり毎日がアッという間に終わるという話から始まりました。

 どこの学校も似たような状況はあると思いますが、川柳中の今年の1年生は特に人の話が聞けない、聞いてもすぐに抜けてしまう、(今年は特に)学力がないという状況にあるため、4月にどういう授業を組み立てようかと迷い、たどりついたのが授業の流れを黒板に貼り、生徒の視覚に訴えるという方法でした。挨拶の後{小テスト}{}{すらすら英会話}{Mission(単語練習)}{前時の復習}{新しい文法の学習}{言語活動など}{まとめ}のカードを黒板に貼り、今日の学習内容を生徒に明示し、その学習項目が終わるとそのカードを外し、「今日はあとこれだけだからがんばろうよ」と生徒を励ましたりして授業を進めているという話に、参加者の中から「すごいねー」という声が聞こえてきました。こうすることにより、教える側も授業がやりやすくなったそうです。またこのカードは、英語係に授業の準備のときに黒板に貼ってもらうことにしているとのことでした。以下、報告での主なポイントを紹介します。

  スタンプシート

 生徒の積極的な授業参加を促す活動として、スタンプシートという挙手を記録する用紙を作りました。生徒は1回挙手するごとに、用紙のマスの中に「正」の文字を書き、「正」の文字1つにつきスタンプを1ヶ押巣という方法。英語の歌を歌っているとき、先生はスタンプを持ちながら回り、スタンプシートにスタンプを押していく。定期テスト終了毎に1枚配布し、数はパソコンに記録して、観点に入れる。

  英語の予習ノート

  ノートは予習に使う教科書準拠の『パーフェクトノート』と、授業で使ったプリントを全て貼り付けるノート(3学年共通実践項目)の2種類。『パーフェクトノート』は新出語句と本文の意味を書くノート。予習をしてきたら「ヒット」のスタンプを、余白に自分なりの勉強をしてきたら「ホームラン」のスタンプを、歌を歌っているときに押す。

こうして授業後に集めて点検する手間を省いている。

  文法の導入・言語活動

  文法は自作のプリントで導入を行っているが、過去に使用したプリントのデータを変えるだけなので、それほど時間は要しない。

 言語活動として「すらすら英会話」というシートを用いて、個人とペアによるインプット活動を行っている。相手のパートも席をずらして、いろいろな人と会話ができるように工夫している。また時にはALTと会話テストをすることもある。

 Mission単語練習) 

Mission とはMission Impossible の曲を流し、その間は生徒は黙々と練習する時間。この曲が流れると、生徒は「黙ってやります」の声に、参加者から「エー」と驚きの声が。 

  他にも自作の面白いクイズなどが紹介され、参加者もしばし頭の体操を楽しむことができました。困難な状況を様々な工夫で乗り切ろうと努力している様子が、とても良く伝わってくる報告でした。

  報告の最後に、コミュニケーションテストの方法について質問が出されました。多くの方から、ALTと2人だけによるコミュニケーションテストを行っている話は良く聞きますが、果たしてそれが適切なのか、説明責任が要求されてくる今、ALTだけの評価で問題は生じないだろうかという質問でしたが、きちんと評価の方法をあらかじめ生徒に説明をしておき、コミュニケーションテストの後、評価用紙に評価のポイントを書いて生徒にすぐ渡す等の方法で行っているので、生徒も保護者も納得しているという実践報告も紹介されました。

  今回、浅香さんはお子さんを一人お連れしていましたが、お母様もご一緒で、浅香先生が報告している間は、お母様がお子さんの面倒を見ていると言う、とても微笑ましい親子の愛を感じた例会でした。

 

次に全国大会に参加した方からの簡単な説明がありました。

■菊地英さんからは「学習放棄の子どもたち」(小川弘義 新潟県・高校)について、自分の考察した資料を添えて説明がありました。

■田中渡さんからは「Peace Message の取り組み」(西川奈代 京都・同志社中学校)と、「自己表現でつなぎたい心と心」(福島悦子 東京・中学)のレポートについて説明をしていただきました。

  西川さんの実践は「自分たちにとって平和とは何か」という課題に対して、授業で蓄積されていった語彙や文法知識を生かして、夏休みに自分で調べたことを英語で表現し、発信するというプロジェクト型の学習でした。5時間の実践で、レポートの中の次のことばがとても印象に残りました。「自分たちで広島に行き、英語のパンフレットをもらってまとめている生徒、東日本大震災の講演を聞きに行った生徒など与えられたフレームだけで、ここまで様々な記事を選び、情報を得て英語でまとめることができるのかと感動した。」

 福島さんは自己表現活動で自分を見つめ、仲間を知り、認め、そして仲間とあたたかい関係を築いてほしいと願って実践を行っています。そして3年の最後には、自分をしっかり見つめて自分の好きなことばについてのスピーチや、キング牧師のスピーチを発表させたりするなど、ことばの持つ力を意識した授業を展開していることがわかりました。

 昔文化祭で私のクラスの生徒がAIDSの発表に取り組んだとき、自主的に東京の駒込病院にインタビューに出かけたり、アメリカから来日したエイズ患者の宿泊拒否をした東京のホテルの支配人を学校に呼び、宿泊拒否の理由を問い詰めたりしたことがありました。

 生徒は真理を追究しようと思ったとき、自主的に学習する力を持っています。宿泊拒否の真実を追求しようとした生徒たちの目は光り輝き、そして怒りに満ちていました。あのとき教室に満ち溢れていた真実を追求する生徒の真剣な眼を、私は今でも忘れることができません。西川さんのことばから、昔のことを思い出しました。

(文責  大栗)

 

新英語教育研究会埼玉支部

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